Oh-o! Meiji

シラバス

年度 2020 年度
授業科目名 文学部  環境の哲学
担当教員 青田 麻未  兼任講師 単位数 2
開講日 秋学期/水曜日/5限 キャンパス 駿河台
科目ナンバー
(AL)PHL311J
主催区分 AL:文学部・文学研究科 授業形態 1:講義
学問分野(大区分) PHL:哲学 授業言語 J:日本語
レベル 3:学部 実践的・専門的に高度な内容の科目
学問分野(小区分) 1:哲学

授業の概要・到達目標

私たちを取り巻く環境は、今もどんどんと姿を変えています。この講義では、環境美学という学問分野を中心にし、環境というアクチュアルな問題を哲学的に捉えることの意義を探ります。以下で示すように、毎回一つの問いを設定し、その答えを探るなかで環境美学についての知識を身につけつつ、自分自身で思考を深めるやり方を身につけていきます。最終的には、環境と美をめぐる問いをひとつ自分で立て、それに対する自分なりの回答を組み立てるようにできることが目標です。

授業内容

第1回 イントロダクション:一枚の風景画を出発点として、環境について哲学することの可能性を提起することから講義を始めます。また、講義で繰り返し使われる基本的な用語について理解を深めます。

第2回 自然、風景、環境:環境の哲学の講義を始めるにあたって、まず「環境」とオーバーラップしつつ異なるニュアンスで使われることばを並べてみることで、現代において環境という語が前面に出てくる理由を考えます。

第3回 手つかずの自然は必ず美しいのか:環境美学の先駆者であるアレン・カールソンは、人の手が入っていない「手つかずの自然」は必ず美しい、という主張をしていることで知られています。彼の主張とそれに対する反論を見ることで、自然美とは何かを考えます。

第4回 荒野を芸術作品に変えることは環境破壊なのか:カールソンは、1960年代のアメリカで興ったアースワークと呼ばれる、自然環境に手を加えることで「作品」とする芸術が環境に対する「美的侮辱」であると主張しています。彼の主張を検討することで、自然美と芸術美の違いを考えます。

第5回 芸術は環境の美しさを教えてくれるのか:カールソンの主張は、ネイチャーライティングと呼ばれる自然文学から影響を受けています。またそのほかの環境美学者もしばしば、芸術からの影響を公言しています。絵画、文学、映画などさまざまなジャンルの芸術が、それぞれどのように環境の美しさを教えてくれるのかを考えます。

第6回 美は環境保護の理由になるのか:環境美学はその興りからすでに、環境倫理と手を組もうとして展開してきました。黎明期から現在までの環境倫理の展開も辿りながら、環境保護という課題に対して美学がなしうる貢献があるのかを考えます。

第7回 私たちと環境は「一つ」なのか:カールソンとならぶ環境美学の論者であるアーノルド・バーリアントは、我々人間とそのほかの要素が一つに繋がったものこそ環境であると考え、そうした繋がりを美的に経験することこそ環境の美的経験であると考えています。彼の主張を批判的に検討しつつ、環境と我々の関係を考えます。

第8回 「同じ環境」はありうるのか①:我々と環境との関わり方は、一つではありません。たとえば同じ東京という場所にいても、観光で訪れたのか、それともずっと住んでいるのかで、我々の活動や鑑賞に関わる時間の長さも変わってきます。こうした視点の違いと環境における美的経験の違いを考えます。

第9回 「同じ環境」はありうるのか②:前回に引き続き、我々の視点の違いと環境における美的経験の違いを考えます。

第10回 国や地域によって環境の捉え方は異なるのか:環境美学は英米を中心に興りましたが、現在では北欧や中国でも積極的に受容され、それぞれの展開を見せています。またドイツにも、現代の自然美学が成立しています。こうした各地域の展開をみることで、環境観の違いについて考えます。

第11回 いけばなは自然美を表現する芸術なのか:日本における環境観を考えるにあたって、日本の伝統的な芸術の一種とされているいけばなについて考えます。特に20世紀後半以降の国際化の時代に、いけばなが自然という問題とどのように向き合ったのかを検討します。

第12回 環境は美しいばかりなのか:時に、環境は美しいというよりも、むしろ畏怖の対象として我々の前に立ちはだかります。「崇高」という伝統的な美的範疇について、現代的な視点も取り入れつつ考えます。

第13回 未来の人たちは環境を美しいと思えるのか:気候変動という私たちの環境を根本的に変えてしまう現象が、今も進行しつつあります。環境美学者のエミリー・ブレイディは、気候変動後の環境を未来の人々がどのように鑑賞するかを考える「未来の美学」の展開を素描しています。彼女やそれに続く議論を概観しつつ、未来の美学なるものが果たして可能なのかを考えます。

第14回 講義のまとめ:これまでの講義内容を振り返りつつ、レポート課題について説明します。

履修上の注意

講義内でグループディスカッションを行うことがありうる。

準備学習(予習・復習等)の内容

④ 準備学習(予習・復習等)の内容【必須項目】
予習は特に必要ない。復習については、講義で配布するプリントを見直しつつ、関連する事項を書籍などで補うなどし、各回で設定されている問いに対して自分なりの回答を文章化する練習をしてほしい。

教科書

指定しない。

参考書

西村清和『プラスチックの木でなにが悪いのか 環境美学入門』(勁草書房)2011年

成績評価の方法

期末レポート(100%)

Page Top