授業の概要・到達目標
ふだんはほとんど意識しないことであるが、私たちはすでに学校の中で「男女を分けることはあたりまえ」ということを学んできている。以前より選択肢が増えてきているものの、依然として、ランドセル、制服、体操服、その他の持ち物まで、色や形が男女で異なっている。休み時間の遊びも、男女が分かれていることがある。割り振られた性別をその子が望まない場合、親・教師から強制されたり、友だちからいじめられたりすることがある。あるいは教師が無意識に「男の子は活発、女の子はおとなしい」と発言してしまうことがある。そのような〈男女を分ける〉意識によって、子どもたちは何を学んでしまうのだろうか。〈男女を分ける〉無数の境界は、子どもたちの学習に、どのような影響を与えてきたのだろうか。
この授業では、学校を中心に子どもたちの周りに存在する〈男女を分ける〉慣習や仕組み、すなわち、ジェンダーの構造を意識する。そしてジェンダーを変革しようとする授業実践の記録を読み合う。
また、子どもに対する性暴力の問題についても取り上げる。子どもたちはこの社会において「中性」の存在ではなく、子どもたちの性が虐待の対象になることがある。スクール・セクシュアル・ハラスメントや、デートDV、ジェンダー・ハラスメントなど、子どもの性をめぐる問題が学校の中にもある。
ジェンダーと教育について考えるとき、多様な価値観と、その人の生きてきた筋道を大切にする意識が欠かせない。つまり、偏見や思い込みではなく、事実に基づいた議論、異なる意見を尊重しあう態度を養うことが必要である。この授業では講義に加えて、こうした対話的な関係を体験するために、グループ活動を行う。グループ活動では、少人数でレポートを読み合い、話し合うことに取り組む。
また、この授業ではなるべく多くの授業実践を読み、子どもたち自身が考え話し合う学習の展開をあとづける。これらを通じて、学習援助者としての教師の意識変革・力量形成がどのようにして可能になっているかを考える。
授業内容
第1回:この授業の進め方・自己紹介
第2回:ジェンダーとセクシュアリティ
第3回:学校の中のジェンダー①―隠れたカリキュラム―
第4回:学校の中のジェンダー②―教科書のなかのジェンダー―
第5回:スポーツとジェンダー
第6回:家庭科男女共修の歴史
第7回:性教育を考える①―日本における課題―
第8回:性教育を考える②―国際的な視点から―
第9回:スクール・セクシュアル・ハラスメント
第10回:デートDVの被害と防止
第11回:「慰安婦」問題を考える―歴史教育の課題として―
第12回:進路選択とジェンダー①―日本の現状と課題を知る―
第13回:進路選択とジェンダー②―多様な進路選択を保障するために必要なことを考える―
第14回:レポート提出―グループで読みあう―
履修上の注意
・この授業では、グループに分かれて実践記録等を読むこと、話し合うこと、レポートすることなどに取り組む。
・この授業と合わせて、「ジェンダーと教育B【成人の学習とジェンダー】」を履修することが望ましい。子どもの問題行動の背後におとなの社会の中にあるジェンダー秩序が隠されている場合があることを、意識するためである。
準備学習(予習・復習等)の内容
・ジェンダーに関する問題は、一つの正解があるわけではない。授業中に意見の違いがあった時、「なぜ自分は/相手はそう思うのだろう」と考えてみよう。
教科書
参考書
成績評価の方法
・グループ活動の小レポート(20%)と、最終レポート(80%)による。
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