授業の概要・到達目標
司法や法学の領域を含め日本社会全体に,ジェンダー・バイアス(性差についての固定観念・偏見)が存在して男女共同参画を阻んでいる。このため「ジェンダーと法Ⅰ・Ⅱ」では,既存の法制度や判例等を再検討することで,法曹実務家に強く要求されるジェンダー・センシティヴな問題意識を養い,ジェンダーの視点から法学研究を深めることをめざす。
とくに「ジェンダーと法Ⅱ」では,「ジェンダーと法Ⅰ」で検討したジェンダー法学の理論的諸課題を踏まえたうえで,実務の観点から,性暴力や,ドメスティック・ヴァイオレンス(DV),ストーカー問題,夫婦別姓制問題,相続法改正問題,代理出産問題などについて,判例や事例を参考にして具体的に検討する。ジェンダー法学研究者と日弁連「両性の平等委員会」等で活躍中の複数の弁護士によってオムニバス形式で実施する。
これにより,ジェンダー平等や性差別禁止,市民の安全・安心の諸原則が社会の中で実現されているかどうかを確認し,性暴力等の背後にある性差別や性別役割分業について深く考察することによって,受講生自らが具体的な諸問題の解決方法について考える思考態度を身につけ,法曹等に必要とされる紛争解決能力を高めることを目標とする。
授業内容
①総論・性暴力問題
第1回:序論―ジェンダー法学の意義と課題〔教科書第1章〕,日本の男女共同参画政策等
講義の進め方・レポートの注意
(担当 清野幾久子教授,谷田川知恵講師)
第2回:LGBTIをめぐる問題
(担当 谷田川知恵講師)
第3回:性犯罪をめぐる刑法改正問題(岡崎無罪判決等)〔第12章〕
(担当 谷田川知恵講師)
②DV,離婚・ストーカー問題
第4回:DV防止法の仕組みと保護命令の課題
(担当 山崎新弁護士)
第5回:離婚をめぐる実務の課題1(離婚事由(DV等)と家事事件手続法)
(担当 山崎新弁護士)
第6回:離婚をめぐる実務の課題2(財産分与・養育費・面会交流など離婚に付随する様々な論点)
(担当 山崎新弁護士)
③家族法関係(司法におけるジェンダー・バイアス・相続法改正等)
第7回:司法におけるジェンダー・バイアス)
(担当 金澄道子弁護士)
第8回:家族法改正問題(嫡出推定,離婚後共同親権など)
(担当 金澄道子弁護士)
第9回:相続法改正問題(新法の解説および法律婚家族優遇の是非など)
(担当 金澄道子弁護士)
④家族法違憲訴訟関係,代理出産問題
第10回:再婚禁止期間違憲訴訟・夫婦同姓強制違憲訴訟
2015(平27)年12月16日最高裁大法廷判決等
(担当 辻村みよ子元教授(ゲストスピーカー))
第11回:日本における代理母問題,代理出産の禁止国・許容国等
2007(平19)年3月23日最高裁第2小法廷決定等〔第10章〕
(担当 辻村みよ子元教授(ゲストスピーカー))
⑤東京医大差別事件,セクシュアル・ハラスメント問題等〔第12章〕
第12回:東京医大入試差別事件
(担当 笹泰子弁護士)
第13回:雇用におけるハラスメント問題〔第12章〕
マタハラ訴訟 最高裁2014(平26)年10月23日判決
セクハラ訴訟 最高裁2015(平27)年2月26日判決
(担当 笹泰子弁護士)
第14回:性平等に関する課題
(担当 笹泰子弁護士)
履修上の注意
「ジェンダーと法Ⅱ」では,各分野の専門の教員・弁護士によるオムニバス形式で講義を行う。具体的な講義の進め方,各回の担当者,成績評価の方法の詳細については第1回の授業で説明する。
「ジェンダーと法Ⅱ」の履修者は,「ジェンダーと法Ⅰ」も受講していることがのぞましいが,「Ⅰ」が履修できない場合にも「Ⅱ」の履修は可能である。
準備学習(予習・復習等)の内容
各分野の専門の教員・弁護士によるオムニバス授業となる。本シラバスに回数毎に教科書の該当箇所や判例名を示しているので,受講にあたっては,予め該当箇所等を読んで内容を理解しておいてほしい。
教科書
辻村みよ子『概説 ジェンダーと法―人権論の視点から学ぶ〔第2版〕』(信山社,2016年)
その他,適宜コピー配布等を行う。
参考書
成績評価の方法
レポートに,平常点(議論参加度や講義中の発言など)を加味して判定する。その比率は,レポート点70%,平常点30%とする。成績評価基準は,①問題発見能力・分析能力,②問題解決能力,③発表能力である。
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