授業の概要・到達目標
本講義では,企業経営における人的資源問題を家族やジェンダー意識の変化を視点に考えていく。まず,戦前・戦後の日本の企業経営を振り返って,雇用管理システムの構築に,いかに日本の伝統的ジェンダーや家族システムのあり方が反映されてきたかを解き明かす。具体的には,日本的経営論と「イエ」の論理や家父長制に関する議論を紹介する。次に今日の家族形態やジェンダー意識の変化を捉え,その流れに整合的な企業システムのあり方を模索する。これには,ビデオ映像や統計データなど各種資料も多用して,ジェンダー問題のみならず,若年労働,高齢者雇用,正規・非正規雇用に関する問題についても詳しく言及する。こうした知見をもとに,実際,企業の第一線で活躍するキーパーソンをお迎えし,日本企業の現状について直接話しを伺う機会を設けることも計画したい。
授業内容の理解を通じ,現代の日本社会や企業におけるジェンダー問題への関心を高め,自分なりの考えを持つことを達成目標とする。授業内での発言,リアクションペーパー,定期試験の結果をもってその成果を図ることとする。
授業内容
第一回:aのみ イントロダクション ジェンダー・マネジメントとは。この講義の意図するもの
ジェンダーマネジメントを学んで見えてくるあなたの仕事,家庭,ライフキャリア
第二回:身近にある無意識のジェンダーバイアスを探してみよう
第三回:戦後日本の経済発展はお父さんのおかげだった
第四回:昔の話とは限らない 会社の仕組みと「イエ制度」
第五回:結婚するなら専業主婦(主夫)? 人生100年時代のキャリアデザイン
第六回:正社員,一流企業 これで将来安泰は本当?
第七回:長時間労働は高業績,高評価の必須条件か?
第八回:育児休業をとると人事評価が低くなる?
第九回:社員寮,社内旅行,アフターファイブ,私生活と会社の境界線とは?
第十回:男性の育児だけ「イクメン」と褒められるのはなぜ?
第十一回:上司からの命令 どこまで従うべき?
第十二回:男性,女性 出世しやすいのはどちら?
第十三回:男女間の賃金格差は当たり前なのか?
第十四回:考察とまとめ
履修上の注意
毎回,aでは講義,bではグループ討議を行う。
討議内容は各班で口頭発表し,最後に個人別の意見をリアクションペーパーとして提出する。
適宜,ゲストスピーカーによる講演と意見交換の機会を設けることも計画している。
準備学習(予習・復習等)の内容
予習については,前週に指示するので各自準備をして授業に臨むこと。事前に授業に関わる資料を配布したり調べるべき課題を指定したりするので,それを読み自分なりの理解と考えを整理すること。
教科書
『女性リーダーを組織で育てるしくみ』中央経済社,
『ラーニング・リーダシップ入門:ダイバーシティで人と組織をのばす』日本経済新聞出版社
参考書
成績評価の方法
毎回出席をとり,リアクションペーパーと議論への参加姿勢(50%)と定期試験の結果(50%)をあわせて評価する。授業内の発表を重視し,平常点に加算する。
その他
「ジェンダー・マネジメントⅠ・Ⅱ」は,企業などさまざまな組織で働く人たちが属性に囚われず自分らしく働ける職場とは何かを探る科目である。科目名ではジェンダーと謳っているが,単に女性にとっての働きやすさを焦点とするのではなく,男性にとっても,若い人,高齢者,外国人など誰にとっても自分らしく働ける組織とは何かについて考えるところにこの講義の目的がある。特にみなさんのような若い人に,組織で働くとはどういうことなのか真剣に考えるきっかけを提示したい。
また,授業内容は今日的な企業動向や政府方針と直接的に関係するため,履修者は常時,時事問題やニュースに関心を払い,その知識に基づき議論に参加することが求められる。
※Ⅰのみの履修も可とする。
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