授業の概要・到達目標
フーリエ解析は,任意の周期関数を三角関数系で表現するフーリエ級数と,その拡張であるフーリエ変換を基本的な道具とする。熱伝導方程式などの偏微分方程式を解くための非常に強力な方法として19世紀に登場した。現代では音声・画像のデジタル処理をはじめとする(コンピューターを用いた)信号処理技術に必要不可欠なものになっている。
本講義では,数学理論としてのフーリエ解析の初歩と,離散フーリエ変換, 離散時間フーリエ変換に基づくデジタル信号処理の基礎について学ぶ。フーリエ係数・級数,(通常の意味での) フーリエ変換,離散フーリエ変換, 離散時間フーリエ変換という4種類のフーリエ変換の定義と基本的な性質と計算技法を習得し, 簡単な応用が出来るようになる。
授業内容
第1回:イントロダクション:フーリエ解析のルーツと信号処理への応用,フーリエ級数(1)フーリエ級数
第2回:フーリエ級数(2)フーリエ級数の収束,コンピューターによる数値実験
第3回:フーリエ級数(3)内積空間,最短距離 ⇔ 直交射影
第4回:フーリエ級数(4)完全性,微分との関係
第5回:フーリエ変換(1)導入と定義,反転公式,簡単な関数のフーリエ変換
第6回:フーリエ変換(2)基本的性質
第7回:フーリエ変換(3)応用 偏微分方程式の初期値問題の解法
第8回:離散フーリエ変換(1)サンプリングと離散フーリエ係数,離散フーリエ変換,反転公式
第9回:離散フーリエ変換(2)高速フーリエ変換(FFT),音声信号処理実習
第10回:サンプリング定理:離散フーリエ変換のサンプリング定理,ナイキストのサンプリング定理
第11回:畳み込み(1)定義と基本的な性質
第12回:畳み込み(2)フーリエ変換との関係
第13回:デジタルフィルター(1)線形定常フィルター,単位インパルス応答
第14回:デジタルフィルター(2)FIRフィルター,フーリエ変換の画像処理への応用: CTの原理
履修上の注意
微積分と線形代数は必要に応じて復習すること。「数学とメディア」を履修しておくこと。複素数の扱いに習熟し,フーリエ変換の計算をするために「複素関数・同演習」を履修することが望ましい。
数式処理系のMathematica, Pythonを用いる。
準備学習(予習・復習等)の内容
ノートとWWWで公開する講義資料を良く読んで復習すること。特に新しく学んだ用語・記号の定義は覚えるように努力すること。また授業中のコンピューター実習で出来なかったことが残った場合は,完遂するよう努めること。いずれも不明な部分があれば次回の授業で質問すること。
教科書
特に定めない。講義資料 (講義ノート, サンプル・プログラム) はWWWに掲載する。
参考書
『フーリエ解析の基礎と応用』倉田和浩 (数理工学社)
『フーリエ解析』中村周 (朝倉書店)
『フーリエ解析』大石進一(岩波書店)
『フーリエ-ラプラス解析』木村英紀 (岩波書店)
『現代解析入門』藤田宏・吉田耕作 (岩波書店)
『キーポイントフーリエ解析』船越満明 (岩波書店)
『弱点克服 大学生のフーリエ解析』
矢崎成俊 (東京図書)
『高校数学でわかるフーリエ変換--フーリエ級数からラプラス変換まで』竹内淳 (講談社)
『フーリエ解析学の序章』杉山健一 (数学書房)
成績評価の方法
3回のレポート(30%)と期末試験(70%)による。点数から成績への換算は大学の基準に従う(合格は60%以上の得点を取ることが条件)。
その他
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